2020年05月20日

引退ドキュメント-45 尊敬する金子由香利さんとの対談

40年前の5月20日(火)

女性週刊誌「女性自身」80年6月5日号発売。
5月1日号より連載されている『山口百恵“引退直前の……”本音ハッピー対談』で、
百恵が尊敬するシャンソン歌手、金子由香利さんとの対談が実現した。


六本木のとあるシャンソン喫茶
憧れのひと・金子由香利さんとの対談とあっって、百恵ちゃんは、いつになくワクワク・ソワソワ。
シャンソンを歌い続けて20年。
この日金子さんは、白のブラウスに、黒のパンタロンスーツを小粋に着こなして―

イメージ1246.jpg

山口 この間、金子さんがおでになったNHKの番組の再放送がありましたでしょう。
金子 はい。ありましたね。
山口 それを、私の彼がみたんですって。
金子 まあ、本当!? はずかしいなあ(笑い)
山口 私、彼に“金子さんの歌は、ぜったいに聴いてほしい”って、いつもいっているんですね。
金子 まあ!
山口 だから、彼も気にかけていてくれたらしくって。
   それでやっぱり彼も、すばらしいっていっていました。
金子 そうですか。でも私、あなたのような方に推薦していただけるなんて、本当に光栄だわ。
   もう、はずかしいくらい(笑い)。
山口 そんなあ。


山口 私が、はじめて金子さんの歌を聴いたのは“銀巴里ライブ”(ビクタ−から発売のLP)なんですね。
   アリスの谷村新司さんから“これは、とってもいいから聴いてごらん”と、レコードをいただいて。
金子 ああ、そうなの。
山口 それで、さっそく聴かせていただいたんですけれどあのなかに『再会』という歌がありますね。
金子 ええ。あれは以前愛し合ったことのある2人が、街角でバッタリ出会って―

   あら!ボンジュール 久しぶりね
   ・・・・・・・・
   あの方 奥さんでしょう
   とても 素敵なひとね
   ・・・・・・・・
   
   と、さりげない会話を交わして、別れていくという歌ね。

山口 とてもステキな歌ですよね。
金子 私も大好きなの。
山口 (うれしそうに)そうですか。
   実はわたし、金子さんの歌を聴くまでは、シャンソン―それもフランス語のものは
   特に退屈な歌だとしか感じられなかったんですね。
金子 そうかもしれないわね言葉がわからないと、ね。やっぱり。
山口 そうなんです。それが日本語で、金子さんのシャンソンを聴いたとき、
   私、フッと森繁久弥さんの言葉を思い出したんですね。
金子 あら、どんな?
山口 “歌は語れ、台詞は歌え”という言葉です。
   たいへんな名言だと思うんですけれど、金子さんの歌を聴いていると、
   まざまざと森繁さんの言葉がよみがえってきて。
金子 光栄だわ(笑い)。
山口 私、歌を“語る”ってああ、こういうことなんだろうなって思ったんですね。
   そんなわけですから、昨年の3月、はじめて金子さんの生の舞台(西武劇場)を拝見したときは、
   もう感激しちゃって・・・・
金子 なんだか体じゅうが、かゆくなってきたわ(爆笑)。
山口 あのとき歌ったなかで『眠ってる間に時は過ぎてゆく』というレパートリーがありましたでしょう。
金子 ええ。

   眠ってる間に 夢見ている間に
   時は流れ 過ぎてゆく
   子供の頃は もう夢の中
   時は時は 今も過ぎてゆく
   ・・・・・・・・

   これは、ジョルジュ・ムスタキの歌なの。

山口 私、それを聴くたびに“あ、こんなにも簡単に、時は過ぎてしまうのか。
   自分の生きている瞬間というのは本当に、もっと大事にしなければいけないんだわ”
   って思うんですね。
   それで“じゃや、大切に生きるには、どうしたらいいんだろう”って3日間ぐらい、
   ドーッと真剣に考え込んでしまうことがあるんです(笑い)。
金子 私も、二度と訪れない“いま”という瞬間を大切に生きよう、と歌っているときに、
   いつもそう思いますよ。
山口 そうですか。やっぱり。

イメージ1247.jpg

金子 でも百恵ちゃんは、いまは、とてもいい時間を過ごしているんじゃないかしら。
   どう?
山口 はい。いままであった迷いがなくなって、いまは、仕事のことにしても、本当に
   ひとつのことに対して目をむけられるって感じです。
金子 なにごとも集中できるってことですか?
山口 ええ。そんな感じです
   それに“この会場で、この歌をうたうのもこれが最後だな”と思うと、その歌や
   仕事のことがとてもいとおしく思えてくるんですね。
金子 だから、とてもいい仕事ができるんでしょうね。
山口 最近は特に、雑念も入らず、精神的にもとても安定して仕事ができますね。
金子 いまは、ありったけのものをだして、仕事にぶつければいいのよ。
   あとは彼が待っていてくれるんですもの。
山口 (ニッコリ笑い)はい!
金子 だけど正直いうと、友和さんとのことは、ビックリしたわ。
山口 フ、フ、フ。
金子 でも、さすが百恵ちゃんだ!と思った。
山口 そうですかあ(笑い)。
金子 もう、とても私なんか真似ができないわ。やっぱりなにかをつかんだひとというのは、
   年などと関係ないのね。
山口 そんな・・・・。
金子 そこへいくと私なんか年ばかりとって、なかなか積み重ねができないひとだから
   いざとなると、すぐにグラッと折れちゃうの。
   でも、その分、若いんですって(笑い)。
山口 本当に金子さんて、お若くておきれいですね。
金子 ありがとう(笑い)。
山口 恋をしていっらしゃるからじゃないんですか?(笑い)
金子 それが残念なことに私は、男性に恵まれていないの(笑い)。
   でも、一度だけ小説になりそうな大恋愛をしたことがあるのよ。
山口 ワァーッ!ステキですねえ。
金子 それで、その男性と結婚してしまったの。だから、いままでに男性は、彼だけ。
   フ、フ、フ。
山口 私も、ぜひそうありたいです(笑い)。
金子 でも、その分、歌のなかでは、さまざまな恋を体験してきていますよ。
   ときには娼婦にもなるし、ほれぬいた恋人を殺してしまう女、とか
   さまざまの女の、さまざまの恋を歌のなかでね。
山口 実際の金子さんは、どういう方なんですか?
金子 とても臆病者。ものおじはするし、相手のことを好きでも、口にだしていえないほうなの。
山口 へェー。
金子 それこそ、畳のうえに“の”の字を書いちゃうほうだもの(笑い)。
   とても、自分のほうからアタックなんかできないわ。
山口 それだけに、思い込んだら一途なわけですね。
金子 そう。もう、命がけ。
山口 そこは、私も同じです(笑い)。

山口 ちょっと意外ですね。
金子 そう?じゃ、私は、どういうひと?おしえて(笑い)。
山口 つねに“女”であるひとって感じがします。
金子 まあ!
山口 いつもは“母親”って感じがすごくするんだけれど、ステージに立つと“女”なんですね。
   しかも、イヤ味がなくて、どういうふうに娼婦を演じていても、
   すごく純粋な娼婦なんだって気がします。
金子 まあ、うれしい!
   実はあのおすぎとピーコがね、私のことを“お母さん、お母さん”ていうの(笑い)。
山口 ウフッ。
金子 ま、ふだんは、お母さんでもいいけれど(笑い)。
   私はステージでは“女”でありたいと思うわ。
山口 それが理想ですよね。
   でも、女であり続けるってことは、とてもあたりまえのことのように思えるけれど、
   本当は、いちばんむずかしいことじゃないかって気がしますね。
金子 そうね。でも、いやったらしい女にだけは、ぜったいになりたくないわ。
山口 そうですね。
   私が、金子さんのいちばん好きなところは、そのシンプルなところなんです。
   歌をとおして見る金子さんというのは、ぜったいに素顔だし、それがこちらの胸にも
   ズシンと響いてくるんですよね。
金子 そうですか。
   私もできる限りシンプルでありたいと思ってはいるんですけれど。
   でも、まだね。いまの私の歌には余分なものが多くって・・・・。
山口 そんなことありませんよ。
金子 そう、うれしいわ。
山口 あのう、金子さんは、昔お芝居をやっていらしたと聞きましたが本当ですか?
金子 ええ。少し勉強していました。というのは私、こう思うの。
   歌い手のなかには、いい声で美しくうたうひとがいてもいいし、話口調でうたうひとや、
   たとえば、マイムで表現するひとがいても、おかしくないと思うのね。
山口 はい。
金子 自分の個性が生きて、それを相手に伝えられれば、どんな形をとってもいいと私は解釈
   していますから。
山口 それで、お芝居を勉強して、お芝居の形で・・・・。
金子 そうね。勉強したお芝居の表現とメロディを借りて、自分のなかにあるものを相手に
   伝えようと思ったわけね、私は。
山口 フーン・・・・。
金子 でも、今日はまるで、百恵ちゃんからほめられるために来たみたいだわ。
   こんなはずじゃなかったのに(笑い)
山口 私のほうこそ、いろいろ生意気なことをいって、ごめんなさい。
金子 いいえ。とんでもないこれからは百恵ちゃんの話をしましょうね。(次号へつづく)

<原文まま>

 


冒頭グラビアページには12日、成田からヨーロッパへ旅立つ百恵のグラビアも。


“独身最後のひとり旅”へ出発した山口百恵。
5月12日〜22日、テレビの仕事でヨーロッパ旅行。
ところが三浦友和もそのあとを追うように、5月16〜30日、
CM撮影にヨーロッパへ。
パリかミラノか、周囲の目を気にしないでデートの予定!?
どおりでこの百恵ちゃんの笑顔、嬉しそうなこと。


 イメージ1248.jpg

posted by kayochronicle at 23:00| Comment(0) | 引退ドキュメント
この記事へのコメント
コメントを書く
お名前:

メールアドレス:

ホームページアドレス:

コメント: